📌 【この記事のポイント】
・MBTIは「自己申告型」「結果が変動する」という設計上の特性を持つ
・採用判断に使うべきかどうかは、ツールの良し悪しではなく「何を測る設計か」で判断する
・行動評価との違いを理解することで、自社に合ったツール選定の判断基準が得られる
✅ MBTIを採用に使えるかどうかは「設計を知っているか」で決まる
「MBTIは採用に使えますか?」という問いに対して、「使える・使えない」のどちらかで答えるのは難しいといえます。なぜなら、その答えは「MBTIが何を測るツールとして設計されているか」を理解したうえでなければ、判断できないからです。
MBTIは世界的に普及した性格タイプ診断です。16タイプに分類される結果はわかりやすく、チームコミュニケーションや自己理解の文脈で広く活用されています。一方で、採用選考の判断材料として使う場合、その設計上の特性を正しく理解していないと、評価のズレが生じるリスクがあります。
この記事では、MBTIの設計上の特性を整理したうえで、採用場面で何を補完すれば機能しうるのか、あるいはどのような目的には不向きなのかを考えていきます。
🔍 MBTIが持つ2つの設計上の特性
MBTIを採用に活用するかどうかを判断する際に、まず押さえておくべき設計上の特性が2点あります。
1. 自己申告型である
MBTIの結果は、受検者自身の回答をもとに算出されます。つまり、「自分がどう思うか」「自分はどんな人間だと認識しているか」という自己認識を測る仕組みです。
採用場面においては、応募者が「この会社に入りたい」という動機を持っています。その状況下で自己申告型のツールを使うと、意識的・無意識的に「良く見せたい」方向で回答が寄る可能性を排除できません。これは受検者の誠実さの問題ではなく、自己申告型という設計上、構造的に生じやすい特性です。
2. 結果が変動しやすい
MBTIに関しては、同一人物が一定期間をおいて再受検した場合に結果が変わることがある、という調査知見が複数存在します。たとえば、気分・体調・その時の状況といったコンテキストによって、回答が変化することがあります。
採用判断は「この人物の安定した特性・傾向を見たい」という目的で行われます。その観点からすると、結果の変動性は評価の安定性に影響しうる要素として認識しておく必要があります。
以上の2点は、MBTIが「悪いツール」であることを意味しません。ツールの設計目的と、採用場面での利用目的とのあいだにギャップがあるという点を理解することが重要です。採用判断において「このツールは何のために設計されているか」を把握せずに使用することは、どのツールでも評価の精度低下につながります。MBTIに限らず、ツール選定の基準として常に立ち返るべき問いです。
📊 行動評価との設計の違いを整理する
MBTIと比較される評価アプローチとして、行動特性をベースとした評価があります。両者の設計上の違いを整理します。
評価対象の違い
MBTIが測るのは「性格タイプ」、すなわち「その人がどういう人か」という特性です。一方、行動特性ベースの評価が見るのは「その人がどう行動してきたか」という行動の再現パターンです。
採用の文脈でいえば、「入社後にどう動くか」を予測したい場合、「過去にどう動いてきたか」の事実を確認するほうが、予測の根拠として機能しやすいといえます。
自己申告と行動事実の違い
行動特性ベースの評価では、「〇〇という状況でどう行動しましたか」という過去の具体的な行動を確認します。この場合、回答は自己認識ではなく行動事実であるため、「良く見せる」方向にすべてを作り込むことが難しくなります。もちろん、面接でのBEI(行動事実面接)手法や、診断ツールの設計によって精度は異なりますが、評価の対象が「行動事実」である点が根本的な違いです。
利用目的の違い
MBTIは「コミュニケーションスタイルの把握」「チームビルディング」「自己理解の促進」といった目的との親和性が高いとされています。採用後の入社者との関わり方を考える文脈では有用な情報を提供しうるでしょう。
一方、「この候補者が自社の職務で活躍できるか」を判断する採用選考の場面では、行動事実に基づく評価との組み合わせや補完が検討に値します。
この「ツールが得意とする文脈」を理解したうえで利用目的を設計することが、どのツールを選ぶ場合でも共通して重要な視点です。ツール自体の優劣を問う前に、「自社が採用で何を判断したいのか」を言語化することが出発点になります。
💡 採用でMBTIを扱う際の実務的な整理
以上を踏まえると、MBTIを採用に活用するかどうかの判断は、「使う・使わない」という二択ではなく、「何の目的でどう使うか」という設計の問題として捉えることが実務的です。
採用場面でMBTIを参照する場合に検討しておきたい点を以下に整理します。
・採用判断の主軸に置くのではなく、コミュニケーション傾向の参考情報として位置づける
・自己申告であることを前提に、面接での行動確認と組み合わせて補完する
・「このタイプだから採用する/しない」という判断に直結させない運用ルールを設ける
・結果の変動性を踏まえ、単一時点の結果を固定的な特性として扱わない
採用判断の精度を上げるためには、「どう思うか」ではなく「どう行動してきたか」という行動事実の確認を評価の軸に置くことが有効です。MBTIの活用範囲をその補完的な位置に設計することで、ツール本来の強みが活きやすくなります。
また、採用場面でどのツールを使うにしても、「このツールは何を測るために設計されているか」という問いを起点に判断することが、評価設計の基本といえます。MBTIの設計上の特性を正しく理解することは、その判断基準を持つための第一歩です。
💬 よくある質問(FAQ)
Q1. MBTIで採用選考をしている会社は問題があるのでしょうか?
MBTIを採用に使うこと自体が法的に問題となるわけではありません。ただし、MBTIの設計特性(自己申告型・変動性)を理解せずに採用の主判断軸として使用する場合、評価の妥当性に課題が生じるリスクがあります。何を目的にどのように使うかという運用設計が重要です。
Q2. MBTIと行動特性診断は併用できますか?
目的を明確に分けることで併用は可能です。MBTIをコミュニケーション傾向の把握に活用し、行動特性診断を採用判断の補助軸として使う、という役割分担が一つの考え方です。ただし、複数のツールを使う場合は、それぞれの評価結果が何を根拠にしているかを担当者が理解していることが前提になります。
Q3. 採用でMBTIを使わないとすれば、何を使えばよいですか?
「どのツールを使うか」より先に「何を評価したいか」を明確にすることが重要です。採用後に活躍する人材の行動パターンを言語化し、その行動特性を確認できる評価軸と手法を設計する、というアプローチが実務的です。行動事実を確認するBEI(行動事実面接)や、行動特性ベースの診断ツールは、そのような目的に設計されたアプローチの一例です。
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Q4. MBTIの結果は本当に変わりますか?
同一人物が期間をおいて再受検した際に異なるタイプが出ることがある、という知見は複数の調査で報告されています。CPP社(旧マイヤーズ・ブリッグス社)自身も、MBTIは職務適性の予測ツールとして設計されたものではないとしています。採用の文脈でこの点をどう扱うかは、運用ポリシーとして明確にしておくことが望ましいといえます。
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