ジョブ型雇用とコンピテンシー|職務要件と行動特性の二層整理

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ジョブ型雇用を検討するとき、多くの人事担当者がまず向き合うのが職務記述書(ジョブディスクリプション)の整備です。ただ、職務の中身を書き出しても「この職務を誰に任せるか」「どう評価するか」という問いはなお残ります。ここで改めて意味を持つのが、ジョブ型雇用とコンピテンシーの関係です。本記事では、職務要件(何をするか)とコンピテンシー(どう行動するか)を二層に分けて整理します。


📌 【この記事のポイント】

・ジョブ型雇用は、職務(ジョブ)を起点に処遇や配置を考える人事の考え方です
・職務記述書が定めるのは主に「何をするか」であり、「どう行動して遂行するか」までは書き切れません
・コンピテンシー(成果につながる行動特性)は、職務を遂行する行動の質を捉える層として位置づけられます
・評価や採用では、職務要件と行動特性を分けて書き、それぞれ「どう行動してきたか」という事実で確認する設計が考えられます

なお、ジョブ型人事に関する直近3年以内の一次情報としては、内閣官房・経済産業省・厚生労働省が2024年8月に公表した「ジョブ型人事指針」が確認できます。ただし、コンピテンシーの扱い方を定めた公的な基準は確認できなかったため、本記事は概念整理を中心としています。


✅ ジョブ型雇用でもコンピテンシーは「職務の遂行の仕方」を示す軸として残る

ジョブ型雇用に移行しても、コンピテンシーが不要になるわけではありません。職務が明確になるほど、その職務をどう遂行するかという行動の層を別に定義する必要が出てくるためです。

ここで用語を整理しておきます。

・ジョブ型雇用:担う職務の内容や責任の大きさを基準に、処遇・配置・評価を考える人事の考え方
・メンバーシップ型雇用:職務を限定せずに人材を採用し、会社主導の異動や育成を通じて役割を割り当てる考え方
・コンピテンシー:高い成果につながる人に共通して見られる行動特性。性格や意欲そのものではなく、観察できる行動として表される点が特徴です

前述の「ジョブ型人事指針」では、職務ごとに求められるスキルを明らかにし、働く人が自らの意思で学び直しや職務の選択を行える制度へ移行する考え方が示されています。同指針で紹介されている企業事例の中には、コンピテンシー(社員の行動特性)の発揮を評価の仕組みに組み込んでいる例も含まれています。

つまり、ジョブ型雇用における評価は「職務の要件を満たしているか」と「職務をどう遂行しているか」の二つの層で成り立つと整理できます。


🔍 職務記述書だけでは仕事の進め方までは定義しきれない理由

職務記述書は職務の範囲や責任、必要なスキルを明確にする道具です。一方で、同じ職務を担う人の間で生じる行動の違いまでは記述しにくいという性質があります。

理由は大きく三つあります。


職務記述書は「範囲」を定め、「進め方」は人によって異なる

例えば「部門横断プロジェクトの推進」という職務は、記述書に書けば一行で済みます。しかし実際には、関係者の利害を事前に確認して動く人もいれば、論点を整理してから合意形成を図る人もいます。成果に差が出るのは、多くの場合こうした行動のプロセスです。


職務の中身は環境に応じて変わる

事業環境が変われば、職務記述書の内容も見直しが必要になります。ジョブ型人事指針でも、自社の経営戦略や実態に合った導入方法を各社が検討することの大切さが述べられています。職務の記述が変わっても通用する評価の軸として、行動特性の層を持っておく意味があります。


スキルの有無だけでは任せられるかを判断しにくい

資格や経験年数は「できる可能性」を示しますが、実際の場面でその力を発揮してきたかは別の情報です。過去にどのような状況で、どう行動したかという事実を確認して初めて、職務を任せる判断の材料がそろいます。


📊 職務要件と行動特性を二層で書き分ける整理例

ここでは、職務要件とコンピテンシーを分けて記述する考え方を、仮の職務を用いて示します。特定の企業の制度ではなく、あくまで整理のための例です。


例:法人営業のマネージャー職を二層で整理する場合

職務要件(何をするか)
・担当領域の売上計画を策定し、進捗を管理する
・チームメンバーの目標設定と育成を担う
・重要顧客との関係構築を主導する

コンピテンシー(どう行動するか)
・計画と実績のずれに早く気づき、原因を確かめてから打ち手を決める
・メンバーの行動を具体的に観察し、事実に基づいてフィードバックする
・顧客の課題を確認する問いを重ねてから提案内容を組み立てる


評価や採用での確認の仕方

二層に分けると、確認の方法も分けて設計できます。

  1. 職務要件:経験・スキル・担当範囲の実績を、職務経歴や業務記録で確認する
  2. コンピテンシー:過去の具体的な場面で「どう行動したか」を、面接での質問や行動事実を問う診断で確認する

例えば面接では「計画どおりに進まなかったとき、最初に何をしましたか」と問い、その後の行動の流れを順に聞いていく方法が考えられます。本人が「どう思うか」ではなく「どう行動してきたか」を語ってもらうことで、職務を遂行する行動の再現性を判断しやすくなります。

同じ職務要件を満たす候補者が複数いる場合も、行動特性の層があれば比較の観点がそろいます。経験年数の長さや面接での印象だけに頼らず、職務に必要な行動をどの程度実際に発揮してきたかという共通の物差しで検討できる点が、二層で整理する利点です。


💡 「何をするか」と「どう行動してきたか」を一体で設計する

ジョブ型雇用を機能させるには、職務記述書の整備と並行して、職務ごとに求められる行動特性を言語化しておくことが有効です。

設計の際に押さえておきたい点は次のとおりです。

・職務要件と行動特性を同じ欄に混ぜず、層を分けて記述する
・行動特性は「主体性がある」のような抽象語で終わらせず、観察できる行動の形で書く
・評価や採用の場面では、自己申告の印象ではなく、過去の行動事実で確認する
・職務記述書を見直すときは、行動特性の記述も合わせて点検する

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のどちらを選ぶかは、各社の経営戦略や歴史によって判断が分かれる領域です。ただ、どちらの考え方をとるにしても、人材を見極める拠り所を「行動の事実」に置くという原則は共通して活用できます。制度設計や賃金体系の変更を伴う場合は、労務の専門家に確認しながら進めることをおすすめします。


💬 よくある質問(FAQ)


Q1. ジョブ型雇用を導入すると、コンピテンシー評価は不要になりますか?

不要になるとは言えません。職務記述書は主に職務の範囲や責任を定めるもので、その職務をどう遂行するかという行動の層は別に捉える必要があります。両者を分けて評価する設計が考えられます。


Q2. 職務記述書にコンピテンシーを書き込んでもよいですか?

書き込むこと自体は可能です。ただし、職務要件と行動特性が混在すると評価の観点が曖昧になりやすいため、欄や項目を分けて記述しておくと運用しやすくなります。


Q3. メンバーシップ型雇用の企業でも、この考え方は使えますか?

使えます。職務を限定しない雇用の考え方であっても、配置や育成の判断において「どう行動してきたか」を確認する視点は有効です。役割ごとに求める行動を言語化しておくことが出発点になります。


Q4. ジョブ型雇用の導入効果を示す公的な統計はありますか?

導入効果を一般化して示す公的な統計は、本記事の作成時点では確認できませんでした。公的な資料としては、内閣官房・経済産業省・厚生労働省による「ジョブ型人事指針」(2024年8月公表)があり、導入の考え方や企業事例が紹介されています。

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