コンピテンシーモデルの作り方|設計手順を解説

活用・実践

📌 【この記事のポイント】

・コンピテンシーモデルは、既製のフレームワークをそのまま当てはめても自社に定着しにくい
・出発点になるのは、社内で実際に成果を出している人材の行動を具体的に言語化する作業
・「性格」や「思考傾向」ではなく、行動事実を起点に項目を設計することが土台になる
・職種によって求められる行動は異なるため、最終的には職種別に整理する視点が欠かせない


✅ 自社版コンピテンシーモデルは、活躍人材の行動を言語化することから始まる

コンピテンシーモデルづくりの出発点は、立派な理論やフレームワークを探すことではなく、自社ですでに成果を出している人材が実際にどう行動しているかを具体的に書き出すことではないでしょうか。

コンピテンシーとは、職務上の成果に結びつく行動特性の集合を指す言葉です。抽象的な性格特性ではなく、「どのような場面で」「何を」「どのように行ったか」という行動レベルまで分解できて初めて、評価や採用の判断基準として機能します。逆に言えば、行動として言語化できないうちは、まだコンピテンシー項目として運用できる段階には至っていないと考えることもできます。

多くの企業がつまずくのは、書籍やインターネット上にある汎用的なコンピテンシー項目リストを、自社の実情を確認せずにそのまま採用してしまう段階です。項目自体は整っていても、自社の業務内容や評価したい成果と結びついていなければ、現場では使われないまま形だけの制度になりやすい傾向があります。

自社版のコンピテンシーモデルを作る目的は、既存の枠組みを否定することではなく、自社の事業特性や現場の実態に合わせて、評価者・被評価者の双方が共通の言葉で行動を語れる状態をつくることにあるのではないでしょうか。項目の数を増やすことよりも、一つひとつの項目が実際の職場で「あの行動のことだ」と具体的にイメージできるかどうかが、運用できるかどうかの分かれ目になります。


🔍 汎用フレームワークをそのまま使うと機能しにくい理由

汎用的なコンピテンシー項目集がそのままでは機能しにくいのは、業種・職種・組織文化によって「成果につながる行動」が異なるためです。

例えば、同じ「主体性」という言葉であっても、営業職であれば新規顧客への能動的なアプローチを指す場合があり、開発職であれば仕様の曖昧な点を自ら確認しにいく行動を指す場合もあります。言葉としての項目名は共通していても、実際に評価すべき行動の中身は職種ごとに変わってきます。

同様のことは「コミュニケーション力」のような、一見わかりやすい項目にも当てはまります。ある職種では顧客の要望を丁寧に引き出す行動を指し、別の職種では複数部署の利害を調整しながら合意形成を進める行動を指すこともあり、言葉だけを共有していても、評価者ごとに思い浮かべる場面が異なってしまう可能性があります。

また、汎用リストは「一般的によいとされる行動」を集めたものであり、自社の事業戦略や現在の課題と直結しているとは限りません。組織として今、何を強化したいのかという視点が抜け落ちたまま項目だけを借りてくると、評価する側もされる側も、その項目が何を意味しているのか実感を持てなくなってしまいます。

結果として、コンピテンシー項目が人事評価シート上の文言としてだけ存在し、実際の採用判断や育成計画には反映されない、という状態に陥りやすいのではないでしょうか。項目を増やすこと自体が目的化してしまい、現場からは「評価のための評価」と受け止められてしまうケースも考えられます。自社の言葉で、自社の行動を語れる項目に作り直す作業が必要になるのは、こうした背景があるためです。


📊 コンピテンシー項目を洗い出す具体的な手順

自社版のコンピテンシーモデルを設計する際は、次のような手順で行動を言語化していく考え方が有効です。

・成果を出している人材を複数名リストアップする
 特定の一人ではなく、同じ職種で継続的に成果を出している人材を複数選び、個人の癖ではなく共通点を見つけやすくします。年次や在籍年数が偏らないよう、複数の世代から選ぶことで、特定の時期特有のやり方に偏るリスクも抑えられます。

・行動を具体的にヒアリングする
 「なぜうまくいっているか」を本人の自己評価として聞くのではなく、「実際にどのような場面で、何を、どう行ったか」という事実ベースの行動を聞き取ります。本人の自覚がないまま行っている行動ほど、成果に直結している場合があるため、上司や周囲の関係者からも合わせて話を聞く視点が有効です。

・行動を職務成果と結びつけて整理する
 聞き取った行動のうち、どれが実際の成果(受注、納期遵守、品質向上など)に結びついているかを確認しながら絞り込みます。成果に直結しているかどうかが曖昧な行動は、この段階では項目化せず保留しておく判断も必要になります。

・共通する行動パターンを項目化する
 複数名から共通して見られた行動を、抽象的すぎない粒度で言語化し、項目名と行動例をセットで記録します。項目名だけを独り歩きさせず、必ず具体的な行動例を添えることで、後から見返した際にも解釈のずれが生じにくくなります。

・職種別にグルーピングする
 営業職・企画職・技術職など、職種によって求められる行動の傾向が異なるため、全社共通項目と職種別項目を分けて整理します。全社共通項目を先に固め、その上で職種特有の項目を積み上げる順序にすると、項目同士の重複や矛盾を防ぎやすくなります。

この手順を踏むことで、項目そのものが「自社の実際の成果につながる行動」に基づいたものになり、評価者・被評価者の双方にとって納得感のある基準になりやすいと考えられます。一度にすべての職種を網羅しようとせず、まずは中核となる職種から着手し、段階的に対象を広げていく進め方も現実的な選択肢ではないでしょうか。


💡 職種別に整理し、運用できるモデルに仕上げる

コンピテンシーモデルは、作成して終わりではなく、職種別に整理し直すことで初めて運用に耐えるものになるのではないでしょうか。

全社共通で求められる行動(例:報告・連絡・相談の徹底、期限管理など)と、職種特有の行動(例:営業職の顧客理解、技術職の仕様確認など)を分けて設計することで、評価者は自分の部門に合った基準で判断でき、被評価者も自分の職務に即した行動目標として受け止めやすくなります。

また、一度作成したモデルも、事業内容や組織課題の変化に応じて見直しが必要になります。行動事実に基づいて設計されたモデルであれば、何を根拠に、どの項目を、なぜ見直すのかという議論もしやすくなるという利点があります。逆に、行動事実の裏付けがないまま作られた項目は、見直しの際にも何を基準に修正すべきかが不明確になりやすく、結局は場当たり的な微調整にとどまってしまう可能性があります。

コンピテンシーモデルの作り方において重要なのは、完璧な項目リストを一度で作ることではなく、行動事実を起点に据え、自社の実情に合わせて継続的に調整していく姿勢そのものではないでしょうか。


💬 よくある質問(FAQ)

Q1.コンピテンシーモデルは何名分の行動を参考にすれば作れますか

一次情報として明確な基準は確認できていません。ただし、特定の1名だけを基準にすると個人の癖が反映されやすいため、同じ職種で継続的に成果を出している人材を複数名対象に行動を整理する考え方が一般的です。

Q2.コンピテンシーモデルとコンピテンシー診断はどう違いますか

コンピテンシーモデルは自社にとって求められる行動項目を定義したものであり、コンピテンシー診断はその項目に対して個人の行動特性を可視化・測定するためのツールという位置づけになります。

Q3.中小企業でもコンピテンシーモデルを作る意味はありますか

組織規模にかかわらず、活躍人材の行動を言語化しておくことは、採用基準や育成方針を属人的な感覚に頼らず共有する土台になり得ると考えられます。

Q4.一度作ったコンピテンシーモデルは見直す必要がありますか

事業内容や組織課題は変化するため、定期的に行動事実を振り返り、項目が実態と合っているかを確認する運用が望ましいと考えられます。

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