📌 【この記事のポイント】
・採用してもすぐ辞める問題は、「辞める人の特性」ではなく「採用設計の構造」に原因がある場合がほとんどです。
・早期離職が繰り返される会社には、入口の段階で共通する3つの課題があります。
・本記事では、その課題の構造と、採用設計を見直すための具体的な視点を整理します。
✅ 採用後すぐ辞める原因は「採用設計の問題」である
「また辞めた」「採用してもすぐいなくなる」という状況が続いているとしたら、採用した人の問題ではなく、採用の入口に構造的な課題が潜んでいる可能性を疑ってみることが重要です。
厚生労働省「令和4年雇用動向調査」によると、入職後1年未満に離職する割合は全産業平均で10%超に上ります。早期離職が一定数存在すること自体は珍しいことではありませんが、特定の会社で繰り返し起きる場合、それは個人の問題ではなく採用設計そのものに問題がある可能性が高いといえます。
採用設計とは、「どんな人を・何を根拠に・どう見極めるか」という一連のプロセスのことです。ここに曖昧さがあると、入社後のミスマッチが構造的に発生しやすくなります。
🔍 早期離職を繰り返す会社に共通する3つの課題
早期離職が繰り返される組織には、採用設計の段階で共通してみられる課題があります。以下の3点が特に頻繁に確認される傾向にあります。
課題1:「活躍している人」を言語化できていない
採用基準が「明るい人」「コミュニケーションが取れる人」といった曖昧な定性表現にとどまっている場合、面接官ごとに評価がバラつき、実際の業務に合わない人材が通過しやすくなります。
重要なのは、自社で活躍している人がどのような「行動」をしているか、という視点です。性格や印象ではなく、具体的な行動のパターンを言語化することで、採用基準の精度が上がります。
「うちは現場感覚で採用している」という会社ほど、評価基準が面接官の個人的な好みに依存しやすくなります。採用担当者が変わるたびに採用される人材の傾向が変わる、という場合、基準が属人化しているサインといえます。活躍人材の行動特性を共通言語として整理することで、組織として再現性のある採用基準を持てるようになります。
課題2:候補者への情報開示が不足している
入社前後のギャップは、離職の大きな引き金のひとつです。仕事の内容・職場環境・求められる役割について、採用段階で正確に伝えられているかどうかを振り返ることが重要です。
「良い面だけを伝えて入社させる」アプローチは短期的には採用数を増やせても、早期離職につながりやすくなります。候補者が「自分に合っているかどうか」を正しく判断できる情報を提供することが、長期的な定着につながります。
具体的には、業務の繁閑・チームの特性・評価基準・仕事の難易度といった情報を採用段階でオープンにすることが有効です。候補者にとっては「入社前に判断できた」という安心感につながり、入社後の「こんなはずじゃなかった」という感覚を減らすことができます。入社後ギャップを設計段階で意図的に縮めることが、早期離職の予防に直結します。
課題3:行動特性と職務要件の照合ができていない
候補者の意欲やスキルは確認できても、その人の行動傾向が実際の職務に合っているかどうかを確認できていないケースが多くみられます。
たとえば、細かい作業を正確にこなすことが求められるポジションに、スピード重視・大局的思考が得意な人材を配置した場合、本人にとっても組織にとっても消耗が生じやすくなります。行動特性(どう行動するか)と職務要件(何が求められるか)のマッチングを採用段階から設計しておくことが、早期離職の予防につながります。
この視点が抜け落ちる背景には、採用評価において「スキル・資格・経験年数」が主な判断基準になっていることが多い点が挙げられます。スキルと経験は確かに重要な要素ですが、それだけでは「その人が自社のその職務でどう動くか」を予測するには不十分です。行動の再現パターンという視点を評価に加えることで、採用後のミスマッチを減らす設計ができるようになります。
📊 採用設計の問題が離職を生む:構造を整理する
早期離職の構造は、次のように整理できます。
- 採用基準が曖昧 → 評価がばらつく → ミスマッチな人材が通過しやすくなる
- 情報開示が不足 → 入社後ギャップが生まれる → 「聞いていた話と違う」が起きる
- 行動特性の照合がない → 職務との不一致が発生する → 本人・組織双方が消耗する
この3段階はいずれも「採用の入口」で起きている問題です。採用後の育成や定着支援を充実させることも重要ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。
厚生労働省のデータによれば、新規学卒就職者の3年以内離職率は、大学卒で約30%前後で推移しており、業種によってはさらに高い水準になる場合があります(令和2年3月卒業者調査)。この数字は、採用設計の問題が特定の会社に限らず広く存在していることを示唆しています。
採用設計の問題を見直す際は、「なぜ辞めたのか」の退職理由分析だけでなく、「どんな人が定着しているのか」を起点にした分析が有効です。定着している人の行動傾向を言語化し、それを採用基準に落とし込むアプローチが、再現性の高い採用設計につながります。
💡 採用設計を見直すための3つの視点
早期離職を繰り返さないための採用設計の見直しは、以下の視点から着手するのが現実的です。
視点1:活躍人材の行動を逆引きして採用基準を設計する
現在自社で活躍している人材に共通する行動パターンを洗い出し、それを採用基準として言語化します。「どんな場面でどう動いたか」という行動事実ベースの基準は、面接官間での評価のばらつきを抑えるうえで効果的です。
視点2:RJP(現実的職務予告)を採用プロセスに組み込む
RJP(Realistic Job Preview)とは、仕事のポジティブな面だけでなく、難しさや課題も含めて候補者に伝えるアプローチです。入社後のギャップを減らし、候補者が自己判断で「合っているかどうか」を見極める機会を与えることで、長期的な定着率を高めやすくなるとされています。
視点3:行動特性の視点を採用評価に加える
行動特性(コンピテンシー)とは、成果につながる行動パターンの特性のことです。「どう思うか」ではなく「過去にどう行動してきたか」を起点に評価することで、入社後の実際の働き方をより精度高く予測しやすくなります。面接での行動事実確認(BEI:行動イベントインタビュー)や、行動特性診断ツールの活用がこの視点の具体的な手段として挙げられます。
なお、行動特性診断は「その人の性格を判定するもの」ではなく、「過去の行動から特性・能力・適性を可視化するもの」として設計されています。自己申告型の性格テストとは評価の起点が異なるため、採用評価の補完ツールとして位置づけることで、より実務に即した活用ができます。
💬 よくある質問(FAQ)
Q1. 離職率が高い場合、採用を増やすことで解決できますか?
採用数を増やすだけでは、同じ構造の問題が繰り返されるだけになる可能性があります。離職の原因が採用設計のミスマッチにある場合、まず採用基準・情報開示・行動特性の照合という3点を見直すことが先決です。採用数の拡大はその後のステップとして検討するのが順当です。
Q2. 行動特性診断はどのような場面で役立てられますか?
行動特性診断は、候補者の過去の行動パターンから特性・適性を可視化するツールです。採用面接での評価補完、入社後の配属判断、育成計画の設計など、複数の場面で活用できます。ただし、診断結果だけで採用を決定するのではなく、面接や他の評価との組み合わせで活用することが重要です。
Q3. 中小企業でも採用設計の見直しは現実的に取り組めますか?
取り組めます。大規模なシステム導入がなくても、「自社の活躍人材の行動を言語化する」「面接で過去の行動事実を確認する設問を設計する」といった取り組みは、規模に関係なく着手できます。まず自社で定着している人の共通点を洗い出すことが、現実的な第一歩になります。
Q4. 退職理由を聞くだけでは不十分ですか?
退職理由の分析は有効ですが、「辞めた理由」だけを分析しても採用設計の構造的な問題は見えにくい場合があります。「定着している人の行動傾向」と「採用基準」を照合する分析を合わせて行うことで、より再現性の高い改善につながります。
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